いや、世界は広いので、僕が知らないだけでもうすでに誰かが語ってるかもしれませんけど、記事のタイトルは罪のない程度に扇情的にしておけって、どこかのブログに書いてあったので。3とか5とか10とか箇条書きにしろというのもそこで教わりました。
それはともかく、ひところおたくスフィアをえらく騒がせ、いまも影響力を持ちつづけているキーワード、『ツンデレ』とその後人たちの違いと、なぜ後人たちは『ツンデレ』ほどの地位を決して獲得できないのかという点について、3つポイントを絞って書いてみます。最初はまとめて出すつもりだったのですけど、思っていたより文量が増えそうなので(まだ書いてる途中なのです)、まずはひとつだけ。
1. ツンデレは新しい発見ではない
これはおたく人種にとってコンセンサスに近いほど一般的な認識なので、なにをいまさらと思われる人も多いでしょう。
ツンデレというタームの面白さは、すでに漫画やアニメ・ゲームの世界に数多く登場していたキャラクターの類型に、コンパクトで、かつ、その単語をはじめて耳にした人でも、「ああ、あれのことか」と即座に類推できる名前をあたえたところにありました。ツンデレというカテゴリーに分類されるキャラクターたちは、ツンデレという言葉が生まれてはじめて誕生したわけではなく、以前から存在していたものが、タームの発明以降に再配置されたものです。
「ツンデレ」の発明者は、たったひとつの名前をつけるだけで、これまでもやもやと漂うだけだった概念を確固としたかたちで取り出し、おたくの世界認識を一変させた──という言いかたが大仰ならば、萌えキャラクターが群雄割拠する勢力地図に一瞬にして一大勢力を作りあげ、萌えの潮流を動かしてみせたわけです。これはもしかしたら、木下藤吉郎の墨俣一夜城に匹敵するほどの歴史的偉業と言っていいかもしれません。
「ツンデレ」は、名付けることによって世界を変更する驚き、つまりパラダイムシフト的な「アハ!」体験をユーザーに提供しました。同時に、ツンデレに分類されるキャラクターは以前から数多く存在していたので、「ツンデレ」はユーザーが共感できる「あるある」ネタでもありました。ツンデレブームとは、ツンデレに分類されるキャラクターのブームではなく、ツンデレという言葉のブームだったのです。
後人である「○○デレ」の発案者たちは、ツンデレブームがツンデレという言葉のブームであることは、正しく理解しています。彼らがまず、「○○デレ」というキーワードを産み出すところから入るのはそのためです。
しかし、残念なことに、彼らの多くは、タームを発明するだけでなく、そのタームによって説明されるあたらしいキャラクターの類型を、タームと同時に導入しようとしています。
「○○デレ」の多くが、真剣な創案というより、単なる「ツンデレ」のパロディーとして導入されていることを考えると、これはやむを得ないところではあります。
しかし、真にツンデレの後継をおのが手で産み出したいと望むなら、そのための手段は新奇さのなかにでなく、漫画やアニメ・ゲームの作品世界に漂いながら、いまだ名前のあたえられていない概念を追い求め、それに名前をあたえる作業にこそあるのではないでしょうか。ユーザーが「あるあ……ねーよ!」とツッコまざるを得ないような類型では、ツンデレほどの成功は望むべくもありません。
「ツンデレブームは終わった」という言いかたをする人がいます。しかし、ツンデレブームの後継として選ばれるタームに「○○デレ」という語尾が付くかぎり、いえ、それだけでなく、新しい言葉を発明することによって潮流をつくろうとする試みが続くかぎり、我々は「ツンデレ」という言葉の影響から、まだまだ脱しきれていないと考えるべきでしょう。
つづきます。