- ジャンル:
- かきもの
- シリーズ:
- 種類:
- その他
- 最終更新:
- 2004年05月11日 22時27分
- シリアル:
- 2004-05-11-08
P2Pは技術的に面白い試みだし、その世界には新しい可能性があると思うのです。NTTコミュニケーションズと松下がわざアリなんていう試みをはじめているし、ビジネスチャンスは間違いなくある。だから今回の逮捕でP2P技術やソフトウェアの開発自体が妨げられてしまったら、それはすごくもったいないなあと思うのです。
ネットワークにおける著作権問題のもっとも明るくてかっこいい解決の仕方は、技術を使って、コンテンツを入手した個々のユーザーからの料金徴収を可能にしたり、ユーザーがネットワーク経由でコンテンツ制作者をサポートできるシステムを構築することです。文化の保護を錦の御旗にして著作権の種類と制度をますます肥大化させ、消費者をがんじがらめにしてゆくことではない。我々が音楽や漫画のような娯楽を求める理由のひとつは、そのなかに日常生活よりもおおきな自由や奔放さや解放感があるからです。音楽や漫画から規制でがんじがらめになった窮屈な臭いがするようになったら、たとえモノとしてそこに存在していたとしても、それは娯楽としてはすでに死んでいる。
でもたとえネットワーク経由のコンテンツ売買が一般的になる時代が来たとしても、コンテンツを造る人と受け取る人のあいだには、やっぱり仲介する人が必要なのです。制度を整える人やシステムを構築する人、コンテンツを造る人と受け取る人両方にとって魅力的なポータルを用意する人やコンテンツの海のなかからより良いものを探し出して紹介する人。コンテンツの規模やファンの層が拡大してゆけば、制作者のマネジメントをする人だってどうしても必要になる。
だから資本力を持つ従来のコンテンツ仲介者は、いま有利な場所にいるはずなのです。AmazonやYahoo!の例を見ればわかるように、インターネットではまず最初に知名度を高めたところが勝ち残るのだから。どんどん小さくなってゆくパイを必死こいて守っている暇があるなら、新しい時代のための魅力的なシステムやサービスを構築するために力を注いでほしい。それがコンテンツを造る人にとっても、仲介する人にとっても、受け取る人にとっても幸せな道じゃないですか。AppleのiTunes Music Storeの日本上陸を妨げておいて国内ではモーラやエニーミュージックでお茶を濁すとか、そんなのじゃイカンです。ファイルのコピーとライセンス徴収のシステムだって、下手をしたらまたマイクロソフトにデファクトスタンダードの座を押さえられてしまうかもしれないのに。
……とか書いてるうちにモーラやエニーミュージックに対応した機器が発表されてますが。(→ソニー / ケンウッド / シャープ)
いっぽうGoogleの例があるように、インターネットは後発であっても技術的にすぐれたところが勝ちをおさめる場所でもある。インターネットの住人がいちばん好むのは政治でも国籍でも資本力でも見た目の派手さでもなく、技術的なこころよさなのだから。Winnyは使うもののこころよさに非常にすりよったシステムで、だから既存の制度とぶつかって今回のようなことになってしまったのだけど。
それでも僕はそういう技術的なこころよさがこれからの社会を牽引する力になることを信じたいのです。我々がより速度のはやいCPUを是とし、より帯域の広い接続方法を是とし、より多くのピクセルをいちどに描画できるGPUを是としてきたように。*BSDやLinuxや、あるいはいわゆるひとつの「オープンソース」と呼ばれるソフトウェアが受けているのは、ソースが開示されていることが、開示されていない状況よりも──すくなくとも一部の人々にとっては──こころよいからです。それを忘れてはいけない。
インターネットがより一般化した社会、生活の中にPC的なデバイスがよりいっそう浸透した社会では、技術的な質の高さが市場に果たす役割は、資本力や政治力が市場に果たす役割とくらべて、たぶんいままでよりちょびっと大きくなる。そしてそこはいまよりもすこしだけ見通しが良くて、競争が激しくて、まっとうな腕をもった技術屋さんがいまよりもうすこし報われる社会でもあるはずです。
……ま、たぶん僕の思想はナイーブに過ぎるのでしょうけど。